医療の現場より  福岡リハビリテーション病院

2019/06/19
by メディケア グループ


福岡リハビリテーション病院での取り組み

fukuoka riha HP 団塊の世代が75歳以上になる2025年に向け介護と医療の見直しが始まるなか、手術患者らが入る急性期のベッドを減らし、高齢化で需要が増えるリハビリテーションや在宅医療の充実が注目されています。リハビリテーションにおいて西日本トップクラスの敷地面積を誇り、回復期リハビリテーション病棟入院料1(在宅復帰率や重症な患者の受入率、実績指数などの基準をクリアした病棟)を算定しており、脳卒中・脳梗塞などの脳血管疾患、整形外科分野における運動器疾患のリハビリテーションを行っています。


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栄養課課長

斉藤 ミキ 栄養士

糖尿病療養指導士、健康運動指導士




(2019年6月現在)


栄養はリハビリの基盤

 地域包括ケアシステムの推進にともなって病院は医療機能ごとに地域の中での役割が明確になってきています。

 当院は、一般病棟・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟を有するリハビリ目的の患者さんが多い病院です。整形外科では手術、リハビリ、外来と術前から術後までの関わりがあり、栄養管理の目的もそれぞれの段階で変化していきます。脳血管疾患を中心とした内科では、急性期の治療を終えた患者さんが主なので、低栄養状態の改善が栄養管理のテーマになることがほとんどです。

 発症から早期の段階で急性期病院より転院になることも多いので、栄養ルートや栄養量もまだ安定していない状態からのスタートになることが少なくありません。特にリハビリによるエネルギー需要が高まる回復期リハビリテーション病棟では、エネルギーやたんぱく質が不足しないよう必要量の栄養を補給し、栄養状態をより良い状態に保つことを意識しています。

 経管栄養の場合は、なるべく短時間で安全に栄養剤を投与し、リハビリのための時間を確保することも大切です。整形外科の周術期においても、内科治療においても栄養管理の質が術後回復や治療効果に影響するため、栄養は入院期間を通して適切に管理されていることが求められます。

 栄養と同じくらい、排便も重要です。

 なぜなら、リハビリで立位訓練をするときに下痢の状態で腹圧をかけることは難しいですし、便秘の状態でも、お腹が張って気になりリハビリに集中できず、排便状況がリハビリの支障になっていることもあるからです。排便に問題がある患者さんは食事(栄養)も見直さなければいけないと感じています。

 経口摂取の場合は便秘、経管栄養の場合は下痢が問題になりやすいですが、水溶性食物繊維であるグアーガム分解物(以下、PHGG)のサプリメントは、主に排泄ケアの必要な経管栄養の患者さんに使用しています。

 PHGGはデンプン系の水溶性食物繊維と比較して、腸内細菌叢を改善して短鎖脂肪酸の産生を促進する高発酵性食物繊維である事が知られており、日本を初め世界の多くの国の医療機関や介護施設でも使われているサプリメントです。

 当院では経腸ルートと経口ルートを併用している患者さんも多いため、状況に合わせて経管栄養剤を組み合わせたり栄養補助食品を取り入れたりなど、病棟やリハビリのスタッフと相談しながら栄養補給に関して見直しをしています。

 退院に向けて出来る限り経口に移行させていくには、病態や状況や目的に応じた栄養剤の選択が好ましいので、当院では栄養剤にPHGGが配合されているものではなくサプリメントを採用しています。

PHGGの使用例

 酪酸菌や乳酸菌などの整腸剤が処方されていても下痢が解決しない場合にはPHGGのサプリメントを使用することがあります。当院では、腸内環境を整える目的のサプリメントとしてPHGGとビフィズス菌末を採用しており、PHGGは栄養サポートチーム(以下、NST)回診の場で検討し便秘においても使用することがあります。

 下痢が続く場合は、原因を探るために、まずは無脂肪・無残渣の消化態栄養剤を使い、問題なく投与できるか・便の性状はどうかを確認し、問題なく投与可能であれば、脂質や食物繊維の追加を検討します。食物繊維においては、種類(水溶性、不溶性)や特性などが異なるため、栄養剤に含まれる食物繊維の量と質を確認したうえで必要に応じてPHGGの追加を検討します。

 PHGGを投与するときは、まず1日1包(=6g)から開始してアセスメントしていきます。

 当院では、看護師がブリストル便スケールを用いて排泄状況を観察していますので、反応がない場合は1日3包入れて再アセスメントしていきます。

 入院患者さんでは何らかの整腸剤が処方されていることも少なくないので、PHGGの使用や栄養剤の変更を栄養士から医師へ提案する際には、その理由と期待される効果を電子カルテメールで伝えるようにしています。

 P H G Gはデータや症例もあるので、説明しやすいですし、リスクがなければ試してみることが多いです。

便性状が改善し排便が安定してきたら、一日の投与量を漸減していき投与を中止していきます。投与中止が難しい場合は、隔日投与や数日おき投与などで継続することもあります。

 当院から地域の施設や療養型病院に転院になるケースで、排泄ケアで難渋した方の事例では栄養情報提供書を作成しています。施設ごとに採用している栄養剤やサプリメントは様々ですが、排泄ケアが継続して検討され、患者さんのQOL向上に繋がることを期待しています。

 栄養関連の勉強会は、NST委員会や栄養課から、職種関係なく院内全体へインフォメーションしています。特に採用している栄養剤や栄養補助食品、サプリメントについて、医師・看護スタッフ・薬剤師・リハビリスタッフなどに関心を持って知っていただくと連携もうまくいく印象があります。

食べることは患者さんの意欲に直結

 自分で生命維持のために必要な栄養を摂取し、不要なものを排泄することはリハビリ中の患者さんの意欲に繋がることもあると感じています。

 在宅復帰を目指すには、食事と排泄が鍵になることも少なくありません。栄養士は食べること(栄養を入れること)にどうしても目がいきがちですが、自然なお通じのためのアセスメントもセットで考えるべきではないでしょうか。

 回復期病棟に入院できる期間は、疾患によって日数が決められていますので、栄養でもたもたしているとリハビリが進みませんし、アウトカムにも影響してしまいます。「回復期」は集中的なリハビリテーションによって機能回復が最も期待できる時期です。多職種でベクトルを合わせ関わっていく必要があり、チームでの関わりが結果に繋がりやすい病棟だと思います。

 栄養管理はNSTなどチームで進めていくことが増えているからこそ、他職種の意見を聴きつつ栄養士ならではの視点が大切だと感じています。

 栄養は、生命維持や身体活動のために必要な成分を体外から取り入れ、不要なものを排泄するという営みだと考えると、I N(食事)とO U T(排泄)をアセスメントすることは重要です。栄養士は、医師による治療やリハビリスタッフによるリハビリの効果を引き出すためのからだづくりの役割を担っているのだと考えています。

 当院栄養士や厨房スタッフは、「リハビリはきついけれど、食事を楽しみに頑張れる」という気持ちになれる食事、蓋を開けた時にワクワクするような食事、疲れて食欲がない時でも思わず箸をつけてみたくなる食事の提供を目指しています。

 からだのみでなく、こころの栄養も満たせることが目標です。

栄養士として

 栄養管理を何の為にやっているのかを考え、目的を具体的にとらえると視点が変わってきます。現状での問題点を明確にし、優先順位を考え、栄養補給計画はエビデンスに基づいて作成することが大切です。栄養に関する情報はまだまだエビデンスが確立されていないものも多くありますが、情報源に留意し常に知識の情報更新を意識していま。

 回復期リハビリにアウトカム評価が導入され、より質の高いリハビリが求められていますが、栄養面からも機能回復に貢献していきたいと思います。