医療の現場より  大石記念病院

2020/05/11
by メディケア グループ


精神科病院での鉄分・食物繊維補給の取り組み

 医療法人社団八葉会大石記念病院は東京都足立区にて“こころのケア”を中心に日々進歩する精神科医療を取り入れ、患者様を主体にした最良の医療とケアを行っている病院です。今回は栄養科室長の横山様にお話を伺いました。


                       栄養科 室長

                   横山 様

(2020年2月現在)




病棟回診の重要性

 主に特別食の献立担当をしているのですが、献立を決める上でBMIや血液検査の結果など、データだけでは本当のその方の状態はわかりません。

そこで看護師さんへお願いして病棟回診や申し送りに同席させてもらうことにしました。最初の頃は専門用語を使った会話を理解するのに苦労しましたが、看護師さんに教わったり、自らも勉強し、だんだん理解できるようになってきました。

精神科の患者様は日毎に症状が変化しますが、回診をしていると、カルテにはないその患者様の今の状態が見えてきますし、食べていただくためにはどうしたらよいかを考える上で、病棟回診もとても重要な事と捉えています。


貧血食の鉄付加に関して

 毎月の血液検査の結果、鉄欠乏と診断が出ると、医師より食事箋が栄養科に回ってきて「貧血食」の対象となります。「貧血食」としては、1日に鉄分15mg以上摂取出来るように献立をたてております。

 以前は貧血食の鉄分補給に【鉄分強化ゼリー】や【鉄分強化ヨーグルト】を1品付加する形で提供しておりました。ところが、当院は精神科の単科で患者様が食堂に集まって食事をしております。

 ある時貧血食ではない患者様から「自分も同じものが食べたい。」とか「自分の食事には付いていないのは嫌がらせだ!」等を訴える患者様がおりトラブルになったことがありました。そういった出来事がきっかけで、目に見えない物で鉄付加が出来るものはないかと探した所、顆粒タイプの鉄補給剤を知りました。顆粒タイプで温かいものにも混ぜることが出来るので、食事の中に入れる事で目に見えず付加食ができると考え、導入に至りました。

 


顆粒タイプの鉄補給剤は、炊飯前のご飯に混ぜて炊けると聞きましたが、ご飯だと全員に提供する事になるため、当院では貧血食の方へ毎日、夕食のお味噌汁に入れて提供しております。鉄味もせず、お味噌汁の味も変わらないので、重宝しています。


ヘモグロビン値とアルブミンの関係

当院では毎月血液検査を行っているのですが、貧血食の対象患者様はヘモグロビン値とともにアルブミン値も低い方が多いです。向精神薬を処方されている患者様も多く、下剤を処方されている方も多いです。そういう方にみられる傾向として、食事をしっかり召し上がっていて(1日1, 800kcal)あまり動いていないにもかかわらず体重が増えないことも多いです。貧血と低栄養は関係があるのでは?と考えており、その指標としてヘモグロビン値とアルブミン値をみております。


腸内環境を考えた水溶性食物繊維の活用

当院の夕食の味噌汁には毎日、高発酵性の水溶性食物繊維(グァーガム分解物:PHGG)を6g付加しています。さらに個別対応として、便通にお困りの方には追加でイヌリン入りの水溶性食物繊維を提供しています。

ただ、一部の病棟だけ(高齢者、認知症、車椅子生活)汁物を残す傾向にあるため、1kgの袋タイプをそのまま病棟へ渡し、現場で服薬の時の水分に混ぜて提供していただいております。

最近は、腸内環境が精神に与える影響についても新しい知見が増えてきております。精神科病院では偏食の傾向がある患者様や薬剤の影響で便秘にお困りの患者様が多いことから、栄養科として腸内環境を整える食事を提供することに特に注力しております。下剤や浣腸などの強制排泄をなるべく減らし、水溶性食物繊維や乳酸菌飲料をメニューに取り入れることで自然なお通じを促していきたいと考えております。


東京都栄養士会足立支部発足へ

管理栄養士としての活動を、院内だけでなく、地域全体の栄養環境向上に少しでも貢献できれば、と考えております。以前より健康増進法に基づく栄養管理と、給食施設のより一層の資質向上のため、企業の社員食堂、寮、老人ホーム、及び保育園など給食施設を対象に、定期的に研修会や情報交換会を開催しています。研修会には栄養士だけでなく、施設の責任者など多職種の方が参加しています。

そういった活動が評価され、この度東京都栄養士会足立支部が設立される事となり支部長を任されることになりました。初めてのことですので、多くの課題がございます。

今までの経験を活かし、基盤を固めてから、若い世代へ繋げていければと考えております。