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医療・介護現場レポート
〜おひさま通信〜
特別養護老人ホームでの排泄ケアの取り組み
特別養護老人ホーム芳川の里 様
2014年の静岡県高齢者福祉研究大会において「粉末状食物繊維による排便調節」の研究発表をされた、社会福祉法人たんぽぽ会 特別養護老人ホーム芳川の里(静岡県浜松市)。同施設では、地域の皆様のご要望に応えること、権利としての老人福祉を築くこと、ご利用される皆様の人権と人格が尊重され質の高いサービスが提供できることを大切にしたいという設立の精神のもと、ご利用者おひとりおひとりの暮らしを第一に考えたケアを展開されています。
芳川の里 排泄ケアグループの介護福祉士の皆様
(左から)村松志保さん、鈴木翔さん、太田愛花さん➡
排便コントロールに水溶性食物繊維のサプリを活用
西村統括相談員
食物繊維(グァー豆酵素分解物:PHGG)のサプリメントを用いて自然排便を促し、下剤離れを進めた施設の記事を紹介されました。当施設でも利用者によっては、座薬使用時に便ショックを起こし、急激な血圧低下、顔面蒼白、ふらつき、嘔吐といった症状に至る方もいた為、食物繊維による自然な排便は理想的だと考えました。
鶴谷栄養士
当施設でもPHGGを活用してみようという事になり、対象者を選定しました。普段からセンノシド、ピコスルファートナトリウムといった刺激性下剤、座薬、浣腸の使用が認められる利用者に対してまずは試用を開始しました。
刺激性下剤は腸の蠕動運動を亢進させ腸の内容物を排出させるように働きますが、度重なる使用により身体が刺激に慣れて効果が薄れ、下剤の増量が繰り返される事が問題です。PHGGは、天然のグァー豆からつくられる食物繊維で、他の水溶性食物繊維に比べて善玉菌のエサになり易く、腸内に有用な短鎖脂肪酸を多く産生することが報告されており、下剤に頼らない自然な排便を期待しました。
PHGGの使用例
鶴谷栄養士
PHGGは食堂で一括管理しており、主に食事中の汁物に入れて利用者に提供しています。
PHGGを入れたお椀に汁物を注げばすぐに溶けるので手間も気になりません。少しの水分でも溶けるので液体のとれない方にも提供ができます。管理方法としては、粉末を市販の容器に移し替え、必要量を表にまとめたものを容器に貼り、職員の誰でも使用量が把握できるようにしています。これにより、おひとりおひとりの排便状況を見ながらPHGGの提供量を調整することが可能です。
費用負担については、利用者とご家族に説明し、PHGGの添加を希望される方に購入いただいています。
PHGGを使用して、改善がみられなかった方もいますが、下剤が低減し、座薬や浣腸の使用回数が減るなど、8割の方の排便調節に成功しました。
このような取り組みを皆様にも知っていただこうと、静岡県高齢者福祉研究大会にて発表しました。
西村統括相談員
研究大会では、水溶性食物繊維のサプリ検討に至った経緯、利用者の3ヵ月後の排便回数と薬の使用回数の変化について発表しました。
調査期間が3ヶ月と長期だったのでデータをまとめるのが大変でした。
たくさんの方に聴講いただき、発表後は「食物繊維で下剤が減るのか!」と驚きの声が上がり、他の施設の方々から問合せをいただき反響がありました。
便秘の解消には、水分、運動、食生活の改善が重要と言われています。芳川の里でも運動面に関しては、毎日リハビリの時間を設けていますが、利用者の身体機能による問題などにより、なかなか運動量が確保できない方もいらっしゃいます。
結果として、排便調節は食事に頼るところが大きくなるので、水溶性食物繊維の補助食品がいくらかの助けになる事を今回紹介しました。

(左)地域の皆様やご家族に施設での取り組みを紹介する太田さん
(右)施設で排便ケアに利用しているPHGGのサプリメントを、実際に皆様にも飲んでいただきました
地域やご家族への還元
西村統括相談員
当施設では、介護や相談支援、後援会やボランティアで協力してくださる方々の取り組みを知って頂くために、毎年地域の皆様をはじめ、自治会やご家族等、かかわりのある方々をお招きする芳川の里・いきいき会総会を開催しています。
2015年は食事をテーマに、介護食の紹介・試食、自助具の紹介・展示を行いました。「水溶性食物繊維を活用したお通じの改善」と題して、利用者の方々のお通じが良くなった取り組みについても紹介しました。
鶴谷栄養士
たくさんの地域の皆様に参加いただき大盛況でした。
芳川の里では入居者の「食べたい!」の気持ちに答えるために様々な工夫を行っています。
朝食の主食をパンかご飯から選択いただいたり、夕食は和・洋・中と日替わりで登場します。
今回は介護食の紹介として、食事形態の作り方や、なめらか食の試食、食事介助のちょっとした工夫の紹介をおこない、PHGGも補助食品の紹介ということで、リンゴジュースやお茶に入れて皆様に飲んでいただきました。
冷たくても溶けやすいので、色々形態を変えて飲めるのが良い!と言っていただきました。
このような製品がある事を地域の方々はご存じないので、お茶に入れて飲むだけでスッキリできるのがおもしろいと喜んでいただけました。
西村統括相談員
研究大会の発表では、刺激性下剤、座薬、浣腸の使用頻度の高い方に限定して使用しましたが、その後、他にも利用者の幅を広げてみて、他の方にも役立つことがわかりました。
現在も排便調整の取り組みはグループを作り継続しておこなっておりますが、今後は、水分摂取の取り組みを加えさらに多くの方の排便状態を改善していきたいです。
入居者の方々へのよりよいサービスの提供の一環として、今後も取組んでいきたいと思います。

Oさん 84歳女性/要介護3
未排便3日目のセンノシドの使用が無くなり排便が整った

Kさん 78歳女性/要介護3
未排便3日目のセンノシドが減り、浣腸の使用が半分強まで減った
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