腸内環境を考えた栄養改善への取り組み
~病院給食、栄養指導、レストランとの共同開発~
医療法人社団 仁圭会 林外科病院 様
おひさま通信NEW07
- 医療
医療法人社団仁圭会林外科病院(東京都新宿区大京町27番地)は新宿御苑の正門の目の前にあり、昭和26年開院の歴史ある病院です。
診療科も外科をはじめ、整形外科・消化器科・内科・泌尿器科・神経内科・呼吸器内科・心臓血管外科と、実に多彩な診療科目がそろっております。
龍野先生は、腸内環境を重視した病院給食の考案や、熱心な栄養指導の一方、日本セルフメディケーション学会でSMAC賞を頂いた血糖値を急上昇させないケーキを商品化し、東北への寄付活動を行っています。シリーズ第二弾クルミのチーズスフレタルトは、高発酵性の食物繊維を配合した小麦粉も砂糖も不使用の低糖質ケーキです。
医療法人社団 仁圭会 林外科病院 栄養科 管理栄養士・保健指導士 龍野明子先生
株式会社セキグチ (レストラン トムトム) シェフパティシエ 入嵩西正太シェフ

龍野明子先生
腸内環境を整える重要性
~高発酵性食物繊維の活用~
当院は外科病院のため、骨折や、消化管手術のために、あまり動けない入院生活になることから、便秘になる患者様が多く、食事の面で腸内環境を整える必要性があると考えておりました。
そのため、朝食のヨーグルトに腸まで届き、善玉菌のエサとなりやすい天然グアー豆由来の高発酵性の水溶性食物繊維(PHGG)を強化したものを患者さんに提供しております。
導入当初は従来のカップタイプヨーグルトよりも、人数もいない忙しい朝に手間がかかるため、厨房の抵抗があるかなと思っておりましたが、患者様の為になるのならと快く引き受けていただくことができました。
ぷるんと食感もよく、ほんのりと甘みがあるので、患者様方から作り方を聞かれるほどとても美味しい! と大評判です。
林外科病院名物 水溶性食物繊維入りヨーグルト
ヨーグルトはプロバイオティクス素材として、ビヒィズス菌等の有用菌を直接腸に届ける食品です。食物繊維はプレバイオディスク素材といって、もともと腸内に住んでいる有用菌のエサとなって仲間を増やす食品です。
腸内細菌はなかなか定着しにくいため、毎日食事の中にヨーグルトや発酵食品等プレバイオティクス素材を取り入れて多種多様な腸内フローラを形成することが大事です。また、腸内の有用菌の栄養源となるプレバイオティクスと同時に摂取する「シンバイオティクス」の有用性が学会等でも数多く報告されてお、当院の提供している水溶性食物繊維入りヨーグルトはまさにこのシンバイオティクスの実践になります。
特にPHGGは食物繊維の中でも、腸内細菌により発酵・分解をうけやすく、短鎖脂肪酸をつくる食物繊維として便秘や下痢の改善や食後血糖の上昇を抑える作用等が報告されており、糖の吸収をおさえつつ、おなかの調子を整えたい患者さんには有用な食物繊維と考えております。
そもそも数あるプレバイオティクスの中から、PHGGを選択したのは、数年前に拝読した久留米大学病院の田中芳明先生の記事の中でPHGGの摂取により、腸内細菌に資化され、短鎖脂肪酸が産生され、様々な生理効果を発揮する事を読み、大変いいものだと感じたからです。
短鎖脂肪酸は腸内細菌が食物繊維を発酵分解してつくる産生物質で、酢酸・プロピオン酸・酪酸といった有機酸です。
特に酪酸には抗炎症作用があり、その抗炎症作用により、血中亜鉛・鉄・ALB・Hb値の改善を示唆する試験結果を得ております。
(第2回臨床高血圧フォーラムにてポスター発表)PHGGは酪酸の産生をサポートすることから、院内でも日常的に取り入れたいと考えました。
人間の体には、腸内細菌が直接働くのではなく、腸内細菌が作る「産生物質」が利用されることで正常を維持します。便秘や睡眠不足、ストレス等で小腸や大腸の環境が乱れることで、腸内細菌が産生する物質には変化が出てくると考えています。以前、乳酸菌産生物質の摂取試験をした際に便秘・下痢・血中ALB・鉄・亜鉛などの改善が期待できると確信し、「産生物質」の重要性を強く感じております。
栄養指導でも活用
患者様やご家族様やスタッフにも病院給食で、腸のことを考えたヨーグルトを提供していることをポスター掲示するなどして、啓蒙活動をおこなっております。
栄養指導でも個人の体質、好み、生活に合わせて、疾患改善の為に的確な指導ができるように心がけております。
水溶性食物繊維は消化管手術後の方や糖尿病の方、骨折等で活動性がさがりぎみな方にも積極的に摂取していただきたい栄養素であり、上手に食事の中に取り入れる方法をご紹介しております。
ご家族の方々にもおすすめするのは、排便コントロールが上手にできないお悩みを抱えている方々が、健康で病院にかからない方々にも増えているからです。不足しがちな水溶性食物繊維を摂る事で、余計な病を未然に防げたら素晴らしいと思います。
また、患者様を支えるご家族様が元気でいらして下さる事も、患者様の治療に は必要な事だと思います。
【林外科病院名物 】水溶性食物繊維入りヨーグルトの作り方
排便と血糖コントロールに寄与する水溶性食物繊維入り美味しいヨーグルト♪
カップヨーグルトから切り替えたきっかけは、PHGGの機能を知り、どうしても入院患者様方に召しあがって頂きたい!と思った為。
厨房には非常にお手数をおかけする事になりましたが、気持ちよく速やかに引き受けて頂き、患者様方からも美味しいとご好評を頂いております♪ また、糖尿病患者様方からも、甘くて美味しい!と喜ばれております♪ 酷い便秘で一か月出ない事もあるパートさんが、仕事中に食べて一回りしたら便意がついたというエピソードもありますが、便秘ではない方が下痢になる事はありませんし、下痢の方も改善するので、本当に素晴らしい製品だと思います♪

1.人数と一人分材料を計算し各々計量する
2.ボールに全ての材料を入れる▶▶▶
3.泡だて器でなめらかになるまで混ぜる▶▶▶▶▶▶
4.人数分の器に盛り付けます
人気レストランとコラボ
「血糖値を急上昇させないスイーツ」 の開発
糖尿病でも安心して楽しめるスイーツを院内での管理栄養士としてのお仕事とは別に、東向島にあるレストラン「TOMTOM」(住所:東京都墨田区東向島5-3-7)とコラボレーションをして、糖質が気になる方にも安心してお召し上がりいただける砂糖・小麦粉不使用の「血糖値を急上昇させないスイーツ」のレシピ監修を行っております。
そもそもこのようなスイーツを作ろうと思ったのは、以前勤務していた病院で、バレンタインデーの際、糖尿病で年輩の優しい理事長先生に、普段の感謝の気持ちをこめて、砂糖・小麦粉を使用せず、血糖値は急上昇しないけれど、極甘で濃厚で柔らかなチョコレートケーキを贈りたいと思った事がきっかけです。
砂糖・小麦粉不使用にもかかわらず、ケーキの味は被験者である糖尿病の医師は勿論、看護師や厨房スタッフからも大好評でした。
試験結果と味が大好評で、まとめた資料を見て下さった教授に「あなたお金持ちになれるわよ」と言われたので、東北義援金につなげたいと思い、それならば商品化しやすいようにと、特許庁へ相談し、紹介して頂いた発明協会様のお陰で、お金をかけずに短期間で特許出願する事ができ、次に学会発表をと思い、幸せな事に第10回セルフメディケーション学会で発表する事ができ、SMAC賞まで頂く事ができました。(特定NPO法人セルフメディケーション推進委員会)。
糖尿病は3大合併症の危険だけでなく、「空腹時血糖高値」によって、冠性心疾患は22%、脳卒中は16%上昇するとも言われています。
材料を選べば、糖尿病でも甘く美味しいケーキを食べても、血糖値の急上昇は抑えることができます。
「間食=悪い」というのは単なるイメージであり、空腹時間が長くなると、グルカゴンが上昇し易く血糖値も上昇しやすいため、血糖値を急上昇させない食品を適時適量で間食、摂ることは血糖値の安定にもつながると考えております。
商品化するに当たり、大前提として美味しくなければと思い、美味しい店で思い出したイタリアンレストラン「Tomtom」にメールを出したところ、関口社長が即座に病院へいらして、試作品のケーキを召し上がり、「糖尿病の方の為にも、東北の為にも、自分達も何かしたいと思っていたところです。
是非、一緒にやりましょう」とおっしゃられ、義援金を目的とした血糖値を急上昇させないケーキの商品開発を進める事となりました。
「入嵩西パティシエ」
以前より低糖質やアレルギー対応をしたケーキのご相談等、お客様からの問い合わせがあったものの、専門的な知識がなかったため、対応することができませんでした。
しかし、こうした糖質をあまり気にせず楽しめるスイーツについて、これからの時代はニーズがあるだろうと考え、お店の差別化としても必要な商品だと考え、開発を進めることになりました。
専門知識に富んだ龍野先生の監修を得ることで、安心して商品設計ができました。龍野先生と何度も試作を重ねて妥協することなくできたのが「レガーロ」です。
糖質カット生活を送っている方にも、そうでない方にも幅広くお求めいただいております。お誕生日やクリスマスに、周りの人に気兼ねなく一緒に味わえるのがとてもうれしいという声も多く寄せられております。年々注文量も増えております。

シェフパティシエ 入嵩西シェフ
「龍野管理栄養士」
ありがたい事にケーキはどれも順調に販売して頂いているようです。私の
心意気に賛同し開発協力して下さった方々、ケーキを作って下さる方々、選んで購入して下さる方々、本当にありがとうございます。
お陰様で、この開発を発表した際の目的通り、売上の5%を東日本大震災の義援金として、仮設住宅の結露も寒さ暑さも怖いので、病の予防に期待をこめて、東北感染症危機管理ネットワークへ「血糖値を急上昇させないチョコレートケーキの会一同、代表トムトム」の名義で、毎年寄付させて頂いております。