太陽化学 メディケアグループ
医療・介護従事者向けサイト
医療・介護現場レポート
〜おひさま通信〜
今までの暮らしを継続する取り組み
地域密着型特別養護老人ホーム クレール高森 様
和歌山県新宮市に所在するクレール高森は、遠くに太平洋を眺め、森の木々に囲まれた自然豊かな高森の地に、2014年7月開設された地域密着型特別養護老人ホームです。
ユニットケアに取り組み、増加が見込まれる認知症高齢者や独居高齢者といった中等度の要介護者が、住み慣れた地域でその人らしさと尊厳のある暮らしを継続できる施設を目指されています。建物はこれまでの老人福祉施設のイメージを一新するモダンでお洒落な居住空間で、お一人お一人の生活リズムに合わせた暮らしを支援されています。
岡 司 理事長 (右)
東 潔明 介護主任 (左)
【岡 理事長】
今までと変わりない 暮らしの継続を
施設に入っても“これまでと変わりない暮らしの場”を支援しています。その暮らしのなかでは普通おむつを付けるということはないでしょう。
当施設では、入所からおむつを付けないという考え方を持って取り組んでいます。
実際は多くの方がおむつをされていますが、入所した時点で外す事を前提にケアをプランしていきます。
自立支援介護を活用します
おむつを外したら失敗するかしないか現状を確認しつつ、トイレでの排泄を支援します。最初に取り組むのは下剤の見直しと自立支援介護で、それだけで排便が改善されるケースもあります。
具体的な手段は、
1.下剤を止めてみる
2. 食事・水分など基本ケアをしっかりする(ミキサー食だったら常食に変える、水分が少なければ十分量とってもらう)
3. 運動の促進(ベッド上であれば起きてもらう、車椅子であれば歩行器で歩いてもらうなど)です。そして週一回カンファレンスをし、経過を見ながら対応方法を変えていきます。
【東 主任】
高発酵性の水溶性食物繊維 『グアーガム分解物』の サプリメントを活用します
経過を見ると同時に排便リズムを記録していきます。失敗・成功、時間、便性など記録し、どのタイミングがこの人のリズムかを調査します。
そしてこのデータを見て、次にどうするか項目に合わせた議論をします。
便秘傾向で出ない人はイヌリンを配合したタイプのグアーガム分解物のサプリメントを飲んでもらいます。逆に下剤を飲まないのにダラダラと水様便が出る人も多く、そのような方にはグアーガム分解物を飲んでもらいます。
早い人なら一ヵ月で『下剤漬け・おむつでの排泄の暮らし』から『普通の生活』へ変わります。もちろん時間がかかる人もいます。
グアーガム分解物の優れた機能を実感
以前のことですが、食事・水分などが必要量取れ基本ケアは十分なのに、便性の改善が見られない方がいました。カンファレンスで水溶性食物繊維を使おうということになり、当時案内があった難消化性デキストリンのサプリメントを使用してみました。しかし思ったほどの変化なく、改善が見られない状態が続きました。
ちょうどそのときグアーガム分解物を知り、これに切り替えて様子をみていきました。するとだんだん便性が正常便になっていき、最終トイレでの排便に成功するまで改善されました。
グアーガム分解物への信頼性
トイレ排便が順調にいっていた方の事例ですが、ある日突然前の便性に戻ってしまったのです。早速アセスセメントしましたが何の項目も変わっていませんでした。
原因不明な状況が続いていたある日、「前の食物繊維(難消化性デキストリン)が残っていたので、同じ効能と勘違いし提供していた」という事実が判明しました。その職員が変えた時期とトイレの失敗した時期が重なっており“これが原因”と特定、グアーガム分解物に戻したところ便性も徐々に改善していき、また失敗も無くなりました。
高発酵性の水溶性食物繊維であるグアーガム分解物ならではの効果と再認識し、この経験が信頼を深める決め手になりました
【岡 理事長】
看取りの事例における便性改善に取り組む
何年もパット内で排泄しており、老衰で言葉も発せられず反応がない、食事も受けつけず嚥下機能低下により医師から終末期と判断され、施設での看取りを前提に入所された方の事例です。
もう2週間一切の食事をしておらず、点滴のみ実施という状況でしたが、「このような方でも我々に何か出来ることはないか?」と自立支援介護の視点でアセスメントに取り組みました。点滴ではなく、本来あるべき“口から食べられること”に挑戦していこうと、まずは嚥下可能なものを試行錯誤しながら提供するとともに、グアーガム分解物を飲んでもらいながら支援していきました。すると少しずつ嚥下能力が向上し、お粥と刻み食がとれるまで回復して、それに伴って便性も改善していきました。
グアーガム分解物の使用量も目安である15g/日からスタートしましたが、状態をみながら必要量を変え、最終45g/日まで増やしていったところ、トイレでの座位排便が成功するまで元気になりました。
2週間もたないと言われた方でしたが、入所後一年以上お元気に暮らされました。最後まで難しかった事例ですが、この方を元気に出来たことでおむつゼロを達成することができました。看取り期であっても可能な限り自立支援介護に取り組むこととグアーガム分解物の活用に大きな可能性を感じました。
お世話以上の介護を目指して
当施設は、従来の作業的なケアとは違い『専門性のある高い介護』と『豊かな暮らしの実現』の両面を達成した、お世話以上の介護ができる施設です。部屋は全個室で、独居や認知症の高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるようにという思いで開設しました。
名称のクレールは“明るい、澄み渡った”という意味のフランス語です。施設に入ることに抵抗を感じないようにとの配慮から、作りを明るくモダンにし、室内も広くゆとり感を出しました。自然を感じられる空間にすることで、逆に憧れ感、魅力に思って貰えることを目指しています。
またサービスには特に力を入れており、夏祭りや鯨ウォッチングなどの大きな行事はもちろんですが、行きつけの店にいって楽しんでもらうような身近なサービスも提供しています。今後も高発酵性の食物繊維を活用しながら、豊かな暮らしの実現を目指していきたいと思います。

【左】施設の明るくモダンな空間
【右】ご利用者様の様子
ページの先頭へ