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医療・介護現場レポート
〜おひさま通信〜
経管栄養における下痢のリスク管理
~フローチャートの運用による職種間連携~
名古屋共立病院 様
名古屋共立病院は、2019年に開設40周年を迎えた医療法人偕行会グループの基幹病院です。”総合的な医療・真に患者のための医療・医療従事者の働きがいのある法人運営”という基本理念のもと、地域の専門特化した高機能病院を目指しています。今回は栄養指導部の伊藤やよい様にお話を伺いました。
下痢改善のフローチャート作成
当院では、経管栄養の入院患者様について下痢改善のフローチャートがあります【図1】。フローチャートは作る前は下痢が発生すると色々な職種の方から質問があり、さら原因についても投与速度や腸内細菌の問題などひとつひとつ確認が必要でした。そこでNST委員会が主導となり、エビデンスや上手く解決した症例をもとに下痢改善のフローチャートを作成しました。まずは投与速度の調整を行ない、それでも下痢改善が見られない場合はグアーガム分解物(PHGG)を使用します。PHGGは腸内細菌による発酵率が高いことが知られており、経管栄養が引き起こす下痢防止の目的で世界中の医療現場で使用されている水溶性の食物繊維です。当院では、PHGGは6g/日から投与を開始しています。1週間後に経過を確認し、下痢が改善すれば終了、改善がなければPHGGを12g/日に増量します。最高18g/日まで増量し、経過を観察していきます。
フローチャートは各病棟にファイリングされており、医師から下痢発生時のフローチャート適応の指示が出されたらすぐに処置を開始できます。下痢発生時の対応が統一されたことで、病棟による対応のバラつきもなくなりました。また、今が何日目の状態かといった情報を看護部内で共有しやすくなったとも聞いています。
フローチャートを運用し続けるため
フローチャートを使用し始めて6~7年がたちますが、院内全体で運用できるようになるまでには時間がかかりました。リンクナースやNST委員が知識を深め、それぞれの病棟に情報を持ち帰り実践していきました。そこから徐々に各病棟でレベルアップをしていき、今は院内全体で運用できています。病院全体の勉強会はもちろん重要ですが、地道にやり続けることが大切です。院内全体にフローチャートが行き届いているおかげで、途中で病棟が変わっても申し送りで下痢に対応できています。
このフローチャートの運用を続けるために、今もなお定着させることを意識しています。新しい医師が着任したり、看護師が入れ替わったり、現場の状況は変わっていきます。そのため、栄養指導部から勉強会の開催を呼びかけるなどの働きかけをすることもあります。管理栄養士以外にも看護師・薬剤師でNST専門療法士を取得している方もおり、とても心強い職場です。
PHGGは分包化して使いやすく
病棟でPHGGを使う際は、1kgの大袋を購入し薬剤部で2g毎に分包してもらい使用しています。最初は大袋から密閉容器に入れ替えて使用していましたが、衛生的に問題と考え薬剤部に協力していただく事になりました。フィルム代が2円かかりますが、大袋のコストパフォーマンスの良さでカバーしています。食品のためどうしてもコストが高くついてしまいますが、各部署の協力により工夫しています。かさの都合で分包にするのは2gが最大量ですが、フローチャートの最初は6g/日なので、1包ずつ1日3回使用すると丁度良く、便利です。
小分けしたPHGG
身近な存在として管理栄養士
栄養科や栄養指導室というと、建物の奥や地下、重い扉の向こうにある病院も多いのではないでしょうか。患者様は、栄養指導などの用事がなければ管理栄養士にはなかなか会えないかと思います。しかし私たちは午前中は外来に駐在し、午後は病棟で患者対応しており、患者様からちょっとした質問を受けるなど身近な存在に感じていただいているようです。
また、当院では病院入口の受付前に栄養指導コーナーがあります。上手く言っている人はニコニコと私たちに挨拶をして受付に行かれますが、なかなか上手く行っていない人は顔を伏せて通り過ぎていきます。そんな方にはあえてこちらから話しかけに行き、最近の食事の様子などを伺ったりしています。
医師も患者様に、「診察の前に栄養指導を受けましょう。疾患の悪化予防のために、食事の見直しを継続していくことが治療につながるんですよ。」と言ってくださっており、目標に到達するまで、また達成した後も良い状態を維持するために何度でも指導を行ないます。
外来の栄養相談でも、便秘や消化器術後の患者様から相談を受けるPHGGを紹介しています。高齢者で食が細い方でも負担にならずに摂取でき、重宝しています。管理栄養士は4名おり、120~150名/月の方を指導しております。忙しい毎日ですが、4人とも忙しさをやりがいだと思えるメンバーです。管理栄養士だけでなく、医師や看護師、薬剤師など様々な職種の方が栄養の重要さを理解してくれている職場なので、これからも栄養を通じて患者様の健康づくりに貢献していければと思っております。
左から 梅田華那様(左上) 石井美和様(右上)
中根真利子部長(左下) 伊藤やよい様(右下)
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