介護の現場より  特別養護老人ホーム高浜安立荘

2020/05/21
by メディケア グループ

地域と連携した認知症ケアの取り組みへ

 社会福祉法人昭徳会 特別養護老人ホーム高浜安立荘は、愛知県高浜市にある特別養護老人ホームです。120名、5ユニットの皆様が生きがいのある人生を過ごせるような施設を目指されております。特別養護老人ホームの中でも先進的な取り組みである自立支援介護や認知症ケアについて、次長の小西由香里様(看護師)にお話を伺いました。






(2020年3月現在)



在宅・入所相互利用の展開

 在宅・入所相互利用をご存知でしょうか。ベッドシェアリングとも呼ばれており、短期間の入所を経て、在宅に戻れるようにする仕組みです。現在、愛知県内で実施しているのは当施設のみで、全国でも数件しか実施例がありません。一般の認知度が低く、利用時の選択肢に入らないことが普及が進まない原因だと考えています。相互利用を活用し、「特養に入り続けなくても済む特養」を目指しています。

排泄ケアには水溶性食物繊維を活用

自立支援介護の取り組みとして、介護力向上講習会に参加し、平成23年に愛知県内で第1号のおむつゼロ施設として認定を受けました。学会認定講師も今年で3名となり、さらに自立支援介護に力を入れています。自立支援介護では「水分」「食事」「排泄」「運動」が4つの基本ケアとして、自然な排便を目指すため下剤の連用を見直し、オリゴ糖や水溶性食物繊維を活用することにしました。最初は便秘対策のみと考えていましたが、水溶性食物繊維のグアーガム分解物(PHGG)は下痢にも有用と知り、利用者様に合わせて使い分けています【図1】。


【図1】モニタリング・経過記録

※施設内使用「モニタリング・経過記録」用紙より引用(一部抜粋)

 PHGGは善玉菌のエサとなってくれるので、ヨーグルトや納豆、ビフィズス菌末と一緒に提供することも多いです。最近、酪酸菌入りPHGGのサプリメントを試したところ、今まで便性が改善しなかった2名の方々が10日前後で便性が改善して驚きました。PHGGは善玉菌の中でも特に酪酸菌と相性がよいというエビデンスもありますので、利用者様の状態を見ながら積極的に活用していこうと思います。


おむつはずしの”その先”を

 自立支援介護に取り組み、日中おむつゼロになったことで、おむつ代の大幅な削減に繋がったことも大きな成果です【図2】。定員100名の施設では年間750~800万円おむつ代がかかっている施設もあります。おむつゼロを実施することはコスト削減のチャンスでもあります。また、おむつゼロに取り組むときには、ただ「おむつを外しましょう」、「下剤をなくしましょう」ではなく、その先にある利用者様のQOL向上を考えています。

 おむつを外すことが目的ではなく、外した後にどうしたいか、何をしたいか、その先にある生活の広がりを取り戻すことこそが重要です。利用者様がおむつを外した後、何をしてみたいのか明確にする際に「回想法」が役立っています。

【図2】おむつゼロ達成までのおむつ代の推移  (単位:千円)


※認知症と排便ケアセミナーin名古屋(2016)より改変引用


回想法で認知症対策

 同窓会やクラス会に行くと一気に学生時代に戻って昔話に花が咲きますよね。心地よく楽しい時間を過ごした後、「明日からも頑張るぞ」「久しぶりに○○をしてみようかな」と前向きな気持ちになることが多いと思います。こんな気持ちになるきっかけ作りが回想法です。

当施設では、主に認知症の方を対象に回想法を行っています。回想法を通じて利用者様の人柄や生い立ちが分かるため、スタッフとの信頼関係作りにも役立っています。また、安心して過ごしやすくしてもらうため、施設内にはなつかしい空間をたくさんつくっています。回想法を行う際、意識がはっきりしていないと過去を思い出すことが難しいので、自立支援介護の水分ケアをしっかりすることも重要です。

△施設内にはなつかしい空間が再現されている

「昭和で元気になる会」で地域貢献

 施設内で認知症ケアに回想法を取り入れて効果があったので、地域に広める活動として「昭和で元気になる会」という市民団体を発足しました。高齢者の閉じこもりや地域からの孤立、介護予防を積極的に推進する事を目的として、高浜市と連携して活動しています。現在は、当施設職員と市民ボランティアとの半々で運営中です。高浜市の市民予算枠事業に申請し、交付金を活用しながら活動しています。

 閉じこもりがちだった93歳の女性が、この会を通じてデイサービスで人のお世話をするくらい前向きになってくれました。この女性のように閉じこもりがちな高齢者が外に出て、活気ある毎日を過ごしていただけることが私たちの願いです。施設内だけでなく、地域と連携してより暮らしやすいまちづくりにも貢献していきたいと思います。

▽昭和で元気になる会